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1. 成長期のスポーツ障害

Q1

成長期のスポーツ障害で「休め」といわれましたが、休まなければダメでしょうか?

「2~3ヶ月休んでいるが、ちっともよくならない」と来院される方が多いです。スポーツ障害には,これ以上進行すると元に戻らなくなる「不可逆性」の障害と、適切な休養と手入れで元に戻る「可逆性」の障害があります。
運動を続けたいならば、年齢と障害の程度にもよりますが、完全に休まずに、手入れをしながら運動量を落として続けてもよいのではないでしょうか。ただし、障害を残さないようにスポーツドクターや指導者の正しい指導を受けることが必要です。
「休め」といわれたら、まず、障害名を確認し、「何日間休むとどのように改善し、いつごろ復帰できるのか」を確認し、休んでいる間にやってもよいトレーニングの指導を受けてください。
「とりあえず休んでみようか」が一番無駄です。

Q2

デイサービスとの違いは?

「介護サービスの1つであるデイサービスと違うのは、主にレクリエーションやお食事や入浴の提供が無い事です。高橋整形リハビリクリニック・通所リハビリテーションでは1回の利用時間が約90分と、短い時間で、皆さまがお元気に生活したり、転倒せず社会参加が出来るよう、介護予防に特化したサービスを提供してまいります。

Q3

「成長痛」と診断され、「運動禁止」の指示を受けましたが、運動してはいけないのでしょうか?

「成長痛」とは何でしょうか。
その代表格が、膝のオスグッド病と足の外脛骨障害です。軟い成長中の骨・軟骨を筋・腱が引っ張り過ぎて、その付着部に痛みが生じることです。
寝ている間に筋肉と骨はどちらのほうが早く成長するでしょうか?
軟い筋肉より、硬い骨のほうが先に伸びます!その逆だと、一時的にせよ筋肉がたるんでしまいます。
さて、それでは、「成長痛」と言われたら運動をしてはいけないのでしょうか。例えば膝の痛みは成長の度合いによって痛む部位が移動します。一方では、成長が止まるのは、女子は高校1年の夏頃、男子は高校1年の冬頃です。成長が止まるまで運動を控えていると、心身の発達に悪影響が生じます。従って、適切な除痛や予防の手入れをしながら、「痛い時期には多少控えめに」運動を続けてもよいと思われます。

Q4

「野球肘」と言われたら、もう野球は続けられませんか?

痛くなりすぐに受診する「内側型」。殆どがピッチャーですが、投球数の制限が必要です。
高校生以降でスナップを効かせて投げると起こる「後方型」。これは殆どがキャッチャーです。

あらゆる年齢で投げ過ぎによって起こる「外側型」(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)。外側型は「痛い」と受診する時には軟骨や骨が破壊され、肘の動きも悪くなるので早期発見が大切です。(これも殆どはピッチャーかキャッチャー、又はその両方の経験者です)

プロ野球投手78人のレントゲン検査では、当然ながら殆どの選手は肘の全周に変形症を持っていますが、この外側に変形症を持った選手は皆無です。逆に言うと、外側型の野球肘の治療が手遅れになると肘の変形は必発で、選手は、高校・大学以上では野球の継続が難しいということです。

投げ過ぎで起こる野球肘ですが、中にはあまり投球数が多くないのに発症する方がいます。やはり、体質的に肘が弱いのでしょう。そんな方でも高校に入って骨がしっかりするまで、バッテリーを避けて、ポジションチェンジすれば楽しく野球は続けられます。

WBCでも投手の投球数の制限が採用されました。甲子園では数年前から肘の可動域制限のある投手は登板できなくなりました。エースの連投が美談化される時代は終わりました。
米国でも成長期の投げ過ぎに対して、医学会が警鐘を鳴らし続けてきました。

しかし、現場では聞く耳を持ちませんでした。保険会社が「投げ過ぎで故障した場合は保険金を払わない」と云えばすぐに世界大会で「投球数制限」が実現しました。
障害なく一生スポーツを楽しめることが、スポーツ医学の目的です。「無事これ名馬」です。

Q5

「脊椎分離症」と診断され、「運動をしばらく中止するよう」にいわれました。運動をやってはいけないでしょうか?

腰椎は前方に直径5~6cmの楕円形・筒状の椎体(骨)とその間にある大きな貝柱状の軟骨(椎間板)と、後方に大事な脊髄を入れる環状の椎弓があります。この後方腰素に軸圧の25%が掛かります。
その椎弓を連結している部分に疲労骨折が起こるのが腰椎分離症です。
すなわち、丈夫な椎体を後方から華奢な椎弓が連結した形になっています。その連結部分の骨は、成長期では殆どが軟骨なので細い骨は折れてしまいます。疲労骨折が起こり2~3ヶ月が一番腰痛が強く、完全に折れてしまえばその部分はあまり痛くありません。丁度、超能力でスプーンを折り曲げるときに折れる寸前に歪みが集中して熱くなりますが、その状態が痛いのです。
従って、早期に(小林分類1度)発見して、3ヶ月間しっかり固定すれば76%は直りますが、2度、3度になって完全に離れると、安静や固定をしても骨は治りません。
そこで、レントゲンで患者さんにもわかるぐらいに離れてしまうと、運動を中止しても仕方がないわけです。
高校生になり椎間板の強度が増すと、腰椎分離症の発生は殆どなくなります。と同時に、例えレ線上の分離症があっても椎体の安定性があり、腰痛の原因にはなりません。
特に、20歳過ぎた成人になり、レ線上の分離症を認めても、「骨そのものが痛むことは殆どなく」、筋筋膜性の腰痛又は腰ヘルニアの合併による痛みと考えたほうがいいでしょう。
当院では、成長期の患者さんが立位で腰椎伸展時の腰痛を訴えた場合、ベッド上で復臥位になって頂き、右脚・左脚・両脚・上半身を伸展(そらす)した時に腰痛を訴えたケースで、レ線上分離症(患者さんが見てもわからないような程度ですが)を疑った場合、CT撮影をして早期発見に努めています。「こんな分離症(疲労骨折)をよく見つけた」と思われるような初期分離症を発見すれば3ヶ月の固定と運動中止により95%程度治癒します。
やや進行した分離症でも、強固な固定をすれば確率は低いですが治る症例もあります。

Q6

「シンスプリント」「疲労骨折」バスケットをやっている高校生ですが、運動すると脛すねの部分が痛みます。湿布と内服薬をもらっていますが治りません。

1.骨膜炎(シンスプリント)か、2.疲労骨折が考えられます。これらは骨膜や骨の慢性疲労性疾患ですが、筋肉の疲労として、3.下腿区画症候群(コンパートメント症候群)も考えられます。

  • 骨膜炎(シンスプリント)

    ランニングやジャンプの繰り返しで、脛骨の中・下3分の1内側後縁(ヒラメ筋、長趾屈筋、後骨筋の起始部)に引っ張り張力による炎症が起こるものです。同部に広範囲の圧痛があります。歩行時痛や安静時痛があれば練習量の制限や時に休止も必要ですが、一般的には自分で温熱治療したりしながら運動は可能です。
骨膜が引っ張られるだけなのでレントゲンには異常はありませんが、MRIを撮ると重症の場合は骨に変化があり、疲労骨折への移行が考えられる例もあります。
  • 疲労骨折


    上記と同じような繰り返しストレスで発生しますが、圧痛は一点に集中して限局的で小範囲です。2~3週間たたないとレントゲンで骨膜反応は出ませんが、そこにしこりを触れます。「疾走型」と「跳躍型」があり、前者は6週間程度の運動中止(又は負担の軽減)の後注意して復帰しますが、後者は稀に完全骨折になったという報告が散見されますので、運動中止しても復帰までに4ヶ月位要することがあります。いずれにしても、症状を注意深く観察しながら3週間に1回位のレントゲンチェックをしたほうが安全です。
  • コンパートメント症候群


    運動とともに下腿にはりや痛み、時にしびれが出現し、足首の屈伸が不自由になります。足首や趾を動かす下腿の筋肉は4つのグループに分けられますが、その各々が硬い隔壁で仕切られています。筋肉を持続的に使って筋肉が充血し、むくむと隔室の中で筋肉が窮屈、自由に動けなくなります。
    両下腿をベッド端から下垂して足首を40~50回そらす動作を続けたり、両つまさき立ちを繰り返すと筋肉が硬くパンパンになり痛くなります。
    一定の距離を走るとこのような症状が出るときはスポーツドクターに相談してください。

2. 外傷

Q7

ケガで電気治療を受けたのですが治りません。どうしたら良いでしょうか?

「2~3ヶ月電気治療を受けたが治らない」と来院されます。しかも急性期(受傷直後)から電気治療を受けている人が多いのです。
「電気治療」は物理療法のひとつです。急性期を過ぎて慢性化してから(足関節捻挫なら5~7日過ぎてアイシングの時期を過ぎてから)行うべきです。
しかも、治療した直後に何らかの反応があれば繰り返してもよいですが、何の反応もない処置を繰り返しても改善しません。1週間程度治療を受け何の改善もなければ、セカンド・オピニオンを受けられたらどうでしょう。

Q8

ケガをしたら冷やしたほうがいい?温めたほうがいい?

ケガは、1)打ち身、打撲、捻挫のように後遺症の残らないものと、2)初めに正しい治療をしないと将来後遺症を残すものがあります。また、3)一回の受傷でケガをする外傷と、4)小さな外傷を繰り返してその結果として大事に至るケガ(障害)があります。
1)は昔から「打ち身、捻挫にパテッ・・(湿布)」といわれ、湿布と安静で自然に治るものです。皮下出血や腫れがあれば、4~5日のアイシングをお勧めします。
2)は靭帯損傷、骨・軟骨の骨折や剥離が隠されていることがあります。これを見落として、ただアイシングだけやっていると、取り返しのつかないことがあります。
体重が掛けられない、じっとしていても痛い、痛くて動かせない、腫れがどんどん悪化するときは、アイシングしながら、専門医を受診してください。
3)は内出血を中心とした急性炎症ですから、4~5日間アイシングします。
4)は繰り返す外傷によるもので、必ずしも、出血を伴わないので、アイシングより温めて除痛することが合理的なこともあります。ただし、慢性的な「障害」の経過中に「外傷」を受け出血した場合は、冷やします。従って、「冷やす」のは、出血を中心とした急性炎症に対して、3~4日間出血を止める為に行います。「温める」のは、慢性炎症に対して局所の血行をよくして抗炎症作用のある白血球やリンパ球などを集めて、自らの力で炎症を鎮めようとするものです。


  • ● 外傷による出血やむくみに伴った痛みは4~5日で軽快します。
  • ● アイシングで出血も抑えられますが、痛覚もマヒして痛みが楽になります。30分以上氷で連続して圧迫し続けると「凍傷」になる場合もあります。10から15分位したら一度皮膚の状態をチェックしましょう。


3. 肩の痛み

Q9

ケガで電気治療を受けたのですが治りません。どうしたら良いでしょうか?

「五十肩」といわれ動かさないでいたら、肩が動かなくなり、夜間も目が覚めるようになりました。動かしたほうがいいのですか?安静にしたほうが治るのですか?
『痛い』→『動かせない』『動かさない』→『硬くなる(拘縮)』→『動かすと痛い』という悪循環で肩関節拘縮(凍結肩ともいいます)になった方が沢山来られます。
「五十肩」は江戸時代に平均寿命が50歳であった頃に、消耗性疾患(老化現象)として命名されたものです。

「腱板」という肩を動かす小さな筋肉の腱の部分が、「肩関節」の中にある為、肩を使うと(特に挙上位で)腱板が関節の骨の間でこすれて、40~50歳で磨耗します。
従って、あまり使わないで安静にして痛みが軽減すれば『自然に楽になる』ことが多いものです。「時間がたてば自然に治るので、あまり動かさないように」と広く民間でと云われている為、民間療法では単に温熱療法や、鍼だけで様子を見て悪化することが多いのです。
『痛みをとり、動かせるようにすること』が治療の基本です。
動かすと痛いので筋肉が防御的に動かないように固まっている状況ですから、内服や、湿布、鍼だけでは痛みが取れません。
当院では、肩甲上神経ブロックを第一選択で行います。

この神経は肩関節の上2/3の痛みを支配していますので、このブロックにより、数ヶ月続いていた痛みが軽減します。除痛されている間に関節の授動術を行うと殆どの症例で直後より動かせることが多いものです。動くようになれば、夜間痛は改善します。
『動かせば五十肩は治る』と言えますが、実際には五十肩で動かせなくなるのは、90%以上が非利き手側に起こる事実からもわかります。利き手の方に磨耗が起こっても『使わないわけにいかないから悪化しない』ということです。
ブロックが効かなかったり、効いても2~3日で痛みが戻るときは、MRIなどの精密検査が必要です。また、単なる筋肉の防御だけでなく、関節が硬くなっている場合は、外来で時間を掛けて授動術を繰り返すことが必要になります。
『硬くなる前に痛みをとり動かせるようにすること』が大切です。

Q10

「肩こり」がひどく悩んでいますが、何科を受診したらよいでしょうか?

「肩こり」と言っても千差万別です。
一般には、項と肩関節の間が凝りますが、側頚部、肩甲骨の間、肩関節、時に上腕部までの痛み、後頭部、時に偏頭痛の形で訴える方もいます。
勿論、眼精疲労や内臓(心臓や胆嚢など)からくる場合もありますが、まず、頚や肩関節をチェックしてみましょう。
頚(以下「首」)を自分で動かしてチェックしてください。

  • 首をグルッとまわす。(アゴで大きな円を描く)


    首を左右にねじる。

    首を前後に屈伸する。
    
首を左右に曲げる。
    
その際に上記のどこかに痛みや重さを感じたら、首由来の「肩こり」です。
枕が合わずに首に負担が掛かるため、寝てから1~2時間で痛くなる。
朝方痛みで目が覚めるなど。
    
手のしびれや神経痛の有無も確認してください。
  • 結帯(後手に帯を締める形)、結髪(頭の後で髪を結う形)をやって痛みが悪化すれば、肩関節が悪いのです。



    肩の動きが悪くなると寝ていて目が覚めたり(夜間痛)
朝方痛みで目が覚める。
    1・2のチェックで頚、肩関節に症状が出なければ、整形外科以外にも、眼科・内科・脳神経外科を受信して相談してみることも必要でしょう。

4. 肘の痛み

Q11

「テニス肘」と言われて運動を控えていますが、改善しません。もう運動は出来ないのでしょうか?

一般に「テニス肘」とか「肘の腱鞘炎」と言われますが、1.上腕骨外上顆炎、2.上腕骨内上顆炎が正しい名称です。
すなわち、前腕の2大筋郡である、伸筋郡・屈筋郡が各々外上顆・内上顆の直径10~15mmの狭い部分に付着して、強く牽引するために起こる炎症で、上腕骨外上顆炎や上腕骨内上顆炎と呼ばれます。
強力な腱が付着している部分の炎症ですが、同部の腱には鞘(さや)はありませんので腱鞘炎ではありません。付着部炎といいます。

  • 上腕骨外上顆炎



    中高年のテニスプレーヤーのバックハンドで痛むと言われていますが、日常生活でも、手のひらを下に向けて物を持つ(ビールでお酌する形)などでも痛みます。手首や中指を伸展(そらす)しながら抵抗を加えると痛い。
  • 上腕骨内上顆炎
    青壮年のテニスプレーヤーのフォアハンド(特にワイパースイング)で痛む。日常生活では、長時間手のひらで強く物を押し続ける(車のワックスがけや大量のコピーをとるなど)と起こります。
    軽症の場合は、内(外)上顆をお湯で温めて、消炎鎮痛剤入りクリームでマッサージとストレッチを行い、夜間の湿布で軽減しますが、長期間続いているものや、激しい痛みがある場合は、局所麻酔剤とステロイドを極少量局注します。上記手入れを行い、注射や内服で痛みが軽減している間に、筋肉のストレッチと筋力強化をします。

5. 腰の痛み

Q12

一旦腰が痛くなってから、何回か治療をしましたが、すっきりしません。何かよい予防法はありますか?

  • 腰や背筋からくるもの(筋々膜性腰痛症など)



  • 神経由来のもの。特に坐骨神経が椎間板軟骨で圧迫されているものを腰椎々間板ヘルニアといいます。
  • 腰の骨からくるもの。脊椎分離症、すべり症、変形性脊椎症など。

腰痛のため急に動けなくなるものを急性腰痛症とよび、一般にギックリ腰といわれます。整形外科外来の7割は腰痛患者さんで、その6~7割が筋肉由来のものといわれています。
中腰で重いものを持ち上げたり、引越しや部屋の整理で長い間中腰でいたり、早朝洗面所でくしゃみをしたり、長い時間運転をして腰が重くなったり、いろいろです。腰を支える筋肉(脊柱起立筋などいわゆる”背筋”)が急激な動きに耐えられなくなったり、長座りなど長い時間同じ姿勢でいたため筋肉に疲労がたまったりしたときに起こります。

2の神経刺激のある場合は、坐骨神経痛を伴い、下肢や臀部に放散痛があります。
3の腰椎(骨)由来のものは、殆どが慢性的に経過しますが、腰椎周囲の背筋が硬く伸縮性が無くなった状態だと、腰の筋肉に思わぬ負担が掛かったときに急性腰痛症となります。

従って、当院では腰が痛くて思うように動けない状態(疼痛性側湾など)で来院されても、神経症状がなければ、「帰る頃には楽になりますよ」と申し上げて、固まった腰の筋肉の表面に局所麻酔剤を注射(トリガーポイント注射)して、腰のストレッチを行います。更に、腰に温熱治療を追加します。
経過の長い方や、臀部に張りを訴える方は鍼を追加します。
食事の前や入浴して筋肉がほぐれたときに、日に3~4回ストレッチを行いますが、治っても「寝ている間に腰の骨や筋肉が棒のようになってしまうので、起床時には必ずストレッチして」腰の状態をチェックするように指示します。
このように、腰の筋肉と骨がどのような状態で負担が掛かろうとも対応できるように、常に柔軟性を確保しておくことが大切です。「痛くなってから手入れ」するよりも「痛くならないように予防」することが大切です。

Q13

腰痛の予防に腹筋・背筋の強化が大切といわれますが、どういうことでしょうか?

上半身の胸部(肋骨と胸椎から成り大切な心臓と肺が入っている)と下半身の土台となっている骨盤(上面では内臓を支え、下面では両下肢からの強力な力を受けている)を連結しているものは5個の腰椎のみです。

背側にある背筋は脊柱起立筋が主で、その腰椎そのものを支えていますが、前方(腹側)には二重、三重になった腹筋があり、大量の内臓を保護しています。
このように上半身と下半身は5個の腰椎だけで支えられているわけですから、腰の骨には常に大変な負担が掛かります。
これらの負担を軽減するものが腹筋・背筋です。

この構造は、ラグビーボールやビヤ樽にたとえられます。
ラグビーボールは皮で出来ていますが、空気が入っていなければ、簡単につぶれますが、空気が入っていればつぶれません。樽も周囲をタガでしっかり締めれば、中空でも力は外壁を通過します。すなわち、外壁の腹筋・背筋が強化されていれば、その中央にある腰椎の負担は激減するはずです。
これをラグビーボールの原理といいます。
しかし、安全に腹筋・背筋を強化するためには、強化の前に、又、強化と同時にストレッチによって、腰の骨と腹筋・背筋などの筋肉の柔軟性を確保することが大切です。

Q14

頑固な腰痛に悩まされており、腰椎々間ヘルニアと診断されましたが、「ヘルニア」とはどんな病気ですか?

頑固な腰痛とおっしゃいますが、激痛を繰り返して長引いて治りにくい腰痛を「ヘルニア」と説明されているケースはよくあります。
「ヘルニア」とは「突出すること」を意味しています。腹壁・鼠経ヘルニアは、腹壁や鼠経部より腸が突出して、「脱腸」といわれます。腰椎々間板ヘルニアでは、腰椎間にクッションとして存在する軟骨(椎間板)が後方に突出して下肢へゆく神経を圧迫することです。殆どが坐骨神経で、大腿後面から下腿外側に神経痛を伴いますが、まれに大腿神経が圧迫されると大腿前面の神経痛となります。
神経には、知覚神経と運動神経があります。
知覚神経は「しびれる」「痛い」「感覚が鈍い」という症状ですが、知覚のテストを行えばどの神経がどの程度圧迫されているかがわかります。運動神経も、腱反射の低下や筋力を調べると、どの神経か判ります。椎間板は、直径4~5cm、厚さ1cm弱の貝柱状の軟骨ですが、周囲は強靭な線維軟骨で、中央にアンコ状の軟らかい軟骨(髄核)があり、軟・硬のダブルクッションになっています。
外周の線維軟骨は20歳頃から顕微鏡レベルですが、水分が減り老化が始まります。亀裂の入った、線維軟骨の間から軟らかい髄核が突出してくるのが「ヘルニア」です。

MRIは骨だけでなく椎間板と神経の具合が明確にわかりますが、MRIは「水分」の動きを撮像しているので、突出した軟骨の周囲のムクミ(浮腫)も反映して大きめに写ります。そこで、米国ではMRIが開発された当時は「ヘルニア」の手術が一挙に5倍に増えました。MRIの所見だけでなく、臨床所見をしっかり把握して、手術適応を決める必要があります。
腰椎々間板ヘルニアは保存療法が基本です。手術療法は限られた症例に行われ、突出して神経を圧迫している軟骨塊を摘出します。

Q15

「ヘルニアは切らずに治る」とよく新聞広告等にありますが、手術しなくても治るものでしょうか?

『椎間板ヘルニアは切らずに治す」という広告をよく新聞で見ますが、「—治る」というと誇大広告で医師法違反です。
腰椎椎間板ヘルニアは「切らずに治す」保存療法が基本で、手術療法は限られた症例に行われます。
しかし、頑固な腰痛と治療に抵抗する下肢の神経痛が持続する場合はMRIにより、病態をしっかり把握した上で、手術療法も考慮しつつ経過観察が必要です。

保存療法は、軽症例では理学療法と神経痛に対して、鍼治療を行うと効果的です。内服・湿布も補助的に有効です。腰椎牽引は有効であるというevidence(証拠)は現在のところありません。

手術療法は突出して神経を圧迫している軟骨塊を摘出します。
小さなヘルニアや中等度のヘルニアは保存療法で治しますが、神経症状が強く、長引く場合は手術を考慮せざるを得ません。この場合、ヘルニア塊は髄核の流出をとめている栓とも考えられますので、「栓を抜く」と中から髄核が再度流出し、再発が危阻されます。再発を恐れて中心に残っている髄核を摘出すると数年して、その椎間板は潰れ、そのクッション性が低下し、新たに「腰部症状」が出ます。
そこで、皮膚を1cmほど切って、管を挿入して鏡視下にその塊だけを摘出する手術も広く行われています。「切らずに」酵素で椎間板ヘルニアを縮小させたりする方法も開発されてきており、そういう方法がふさわしいと思われる場合は、脊椎の専門医を紹介します。


「ヘルニア」はタイプによって、色々な自然経過をたどりますので、その手術適応は大変難しいものです。
患者さんを悩ませる「痛い」「しびれる」「感覚が鈍い」など知覚神経の麻痺は手術が遅れても改善はしますが、「筋力低下」「脱力」など運動神経マヒは手術が遅れると全快はしません。
なるべく「切らず」に手術を避けるべきですが、運動マヒの出現や進行・悪化を見落とさないことが大切です。

6. 膝の痛み

Q16

「関節の水を抜くとクセになる」「注射はしてはいけない」とよく耳にしますがどういう意味ですか?

よく「クセになる」と他人から言われたとおっしゃいますので、「性格や日頃の行いがよければクセにはならない」と冗談を言います。

変形性膝関節症など、治りきらない病態のときに、漫然と関節内注射を繰り返すことを戒めるための言葉であり、足底板や適切な理学療法・運動療法を行い、関節の炎症を取る努力をすべきでしょう。

しかし、半月板損傷など外傷性の炎症などでは手術療法を考慮する前に、何度か関節内注射をして炎症が消失するか試してみることは妥当でしょう。小さなキズ(損傷)の場合は炎症が消失して手術が必要なくなります。

「注射してはいけない」と言われてくる患者さんは結構いらっしゃいます。適切な薬剤は内服するより直接注射して患部に高濃度に投与したほうが有効に決まっています。
しかし、注射には弊害があります。

  • 部位によっては痛い
  • 注射による化膿性関節炎

関節軟骨は関節液により栄養されますが、関節腔は閉ざされた空間で、血行から遮断されています。関節腔に誤って細菌が混入された場合は、純培養状態で細菌が増殖し、化膿性関節炎となり、処置が遅れると関節は破壊されます。報告例は、殆ど老人、消耗性疾患で抵抗力がなくなった方、糖尿病患者さんに発生しています。殆どは膝疾患です。
一方では、抵抗の弱い未熟児などは、注射と関係なく、股・肩・膝関節の化膿性関節炎が発生します。従って、必ずしも注射による外来性の細菌だけでなく、口腔、腸管などに内在する雑菌が老衰や病弱な患者では原因となる場合もありますが、注射施行時に無菌的操作は大切です。
これらの弊害を予防しながら、

  • ● 大量の関節液がたまった場合
  • ● 関節内に治療薬を有効に高濃度に投入した場合

  • ● 痛みの原因(責任病巣)を確認したい場合


その責任病巣に局部剤を注入(プロカイン・テスト)したり、ブロック注射したりすることは治療上不可欠とされる手段と考えます。